自宅読書会2000年10月課題
コンセント 田口ランディ
 幻冬舎
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文庫
あらすじ

 朝倉ユキは仕事仲間のカメラマン木村と初めて一夜を過ごし、帰宅すると、父から電話で2ヶ月間行方不明だった兄の死を知らされる。
 兄の死体は2週間発見されなかったため、腐敗し蛆虫がわいて、異臭を放っていた。そして部屋のコンセントには何故か掃除機のプラグが差し込まれていた。
 兄の葬儀からアパートの後始末まで、ユキが一人で取り仕切る。父は兄の死に対して怒りばかりを露わにし、母はうろたえるばかり。葬儀屋ひゃ、部屋の臭いを取り去るために呼んだ消毒業者の青年といるときだけユキは心が慰められた。
 その後、ユキは兄の死臭を至る所で感じてしまう。心配して尋ねて来た木村の口臭から死臭を嗅ぎ取り、「どこか悪いところが・・・」と木村に聞く。木村は検査してみると、癌が発見され手術することに。ユキは満員電車、雑踏などで死臭を感じ、パニックを起こしてしまい、大学のときの恩師にカウンセリングをうけだす・・
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ハードカバー
著者
 女性。東京生まれ。広告代理店、編集プロダクションを経て、ネットコラムニストとして注目される。現在インターネット上で6万人の読者を持つコラムマガジンを配信中。エッセイ「スカートのしたの快楽」「もう消費すら快楽でない彼女へ」。新作小説「アンテナ」
感想
本書は「ひきこもり」をテーマに書かれたものだと思って読み始めました。でも、「ひきこもり」は内容の一部でしかなく、感受性が鋭く人の感情を感知し、感応していまう人が、いかに生き難いか、そしてそれをどう乗り越えていくかを描いていたのだと思いました。
霊的なものの存在を私は全く信じないけれど、生きている人間の表には現れにくい様々な能力の存在は信じています。主人公のユキは死臭をかぎ分けるのですが、犬が癌の臭いや癲癇の発作の前に起こる臭いをかぎ分け、それを人命救助に役立てているのですから、人間も感覚が研ぎ澄まされたら、死臭を感知できるかもしれません。
そういう不思議な現象もただ頭から否定するのではなく、受け入れ、精神分裂病も、本当の病気とそうでなく、人間の感性があまりにも鋭敏になってしまったことによって、起こるものもある、という新しい(新しくもないかもしれないが)考え方を示した作品だと思いました。
結末は少し残念に思いましたが、セックスは人を癒す大きな力があるということには賛成です。
これからも田口ランディさんの作品を楽しみです。
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