
 
 
 
「日本児童文学近刊ご案内」読書会てつぼう編1999年1月28日発行より

 
 
 
 
 
 
                                                                                                                                                                                                                                              
            
 
 
ビート・キッズ     風野 潮・作
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中学生の横山英二が大阪弁で語る、ファミリー青春友情物語。
英二は素直で朗らかでお人よしの天然ボケ。英二は菅野七生に誘
われ、否応なしに、ブラスバンド部に入部する。七生は成績優秀、
楽器は万能で、特にドラムはプロ並み。しかし、性格は高飛車で、
独断的で、プライドが高い。
          英二は、ブラスバンドのことも、楽器のこともチンプンカンプ
ンだったが、一度、太鼓(パーカッション)を叩いて、そのとり
こになってしまう。英二が太鼓を叩く様は、お腹に響いてくる太
鼓の弾ける音を聞くように心地よく文章から伝わってくる。英二
と七生の掛合いに加え、酒飲みで博打好きだけど憎めない英二の
父のボケ方も大いに笑わせてくれる。
 「キレル」とか「ナイフ」とか物騒なことで取り沙汰される中
学生。でも、そんな恐ろしい面でなく、夢中になれるものや友情
家族という心なごませ、熱くなれるところが描かれている。人を
ほっこりさせ自然になごませてくれる英二、七生は英二と親しく
なるにつれて、角がとれていく。押しつけじゃなくて。包み込む
ような優しさが人の心を癒し、心を開かせるのだ。
 そんな英二だが、病弱な母親や逃げ腰の父親に代わって、家族
のことを背負い込み、身動きがとれなくなってします。でも、そ
の苦しみや悲しみをぶつけたとき、父も反省し変わっていく。
           仮面で武装し、内面は見せず、他人を攻撃することで、自分を守り
          がちな人が多い世の中、でも、背負い込まず、心を閉じこめずにやっ
ていこう、と著者の思いがつたわってくる。
 大阪弁のあたたかさとキャラクターの魅力、巻末の作者のイラスト
付の解説も含め、笑って泣かせる作品。 
読書遍歴