2001年2月読書会「てつぼう」
担当課題 夏の終わりに
       丘の上、夢の家族
夏の終わりに(At Every Wedding Someone Stays Home) 1996年アメリカ
1997年アメリカ図書館協議会の最優良図書(ヤングアダルタ部門)に選ばれる
2000年8月徳間書店より
著者
サラ・デッセン ノースカロライナ大学卒。この作品が処女作。「あなたに似た人」「月をつかんで」「ドレームランド」(いずれも未訳)などがある。現在は母校で教鞭をとっている。ノースカロライナ州在住。
登場人物
へイヴン 主人公 15歳 身長177cm
ママ
マック・マクファイル へイヴンのパパ スポーツキャスター
アシュリー ヘイブンの姉 21歳 小柄で美人、元チアリーダー ショッピングセンターの美容部員
ローナー・クイーン 気象予報士 パパの再婚相手
サムナー・リー アシュリーの元彼 
ルイス・ウォーシャー アシュリーの婚約者
ケイシー・メルヴィン へイヴンの友だち
グウェンドリン・ロジャーズ レイクビュー・モデルから一躍有名なモデルになった
リディア・キャトレ フロリダから越してきた近所のママの友だち
あらすじ
へイヴンのパパが再婚する。結婚式で花嫁の付き添い役を姉と共にこなす。ママは家で冷凍庫の霜取りをしていた。その結婚式のあとは、姉アシュレーの結婚式準備の揉め事つづき。パパはへイヴンを食事に連れて行ってくれるが、家を出て行った日以来、決して車を降りて、ドアをノックしようとはせず、車のクラクションを鳴らすだけ。へイヴンは身長が高すぎることを気にしているが、人にとやかく言われても大人しく、して、姉やママのヒステリーに耐えている。へイヴンはショッピングセンターの子ども靴売り場でアルバイトをしている。そのバイトもとても楽しいものとは思えない。そんなとき、アシュレーがサムナーと付き合っていた頃,そして、サムナーも一緒に家族でパパの出張に便乗して行った海岸でのこと、一番幸せだったことを思い出し、いやなことを乗り切っていく。ある日、パパとイタリアンレストランで食事しているとき、偶然にも、サムナーがウェイターとして現れる。サムナーはあちこちでアルバイトしていて、へイヴンといろんなとこで出くわしては楽しい気分にさせてくれる。
一方、友だちのケイシーはサマーキャンプから帰ってきて、恋をして、以前とは別人のように、遠く離れた彼のことばかり話し,たばこまで吸い始めていた。へイヴンはまわりの変化や、苛立ちに次第に腹立ち、いらだっていく。
ショッピングセンターのレイクビュー・モデルから一躍有名なモデルになったグウェンドリン・ロジャーズが、ノイローゼになって戻ってくる。ケイシーとへイヴンはうつろな瞳のグウェンドリンを見かける。地元の女の子のあこがれの的だった女性、グウェンドリンは、今や、TVや雑誌で脚光を浴びていたときの見る影もない。
ケイシーは親の反対を押し切ってでも、遠距離恋愛をつづけ、会いに行きたがっていたが、相手から、もう別の人を好きになったと打ち明けられる。パパの再婚相手のローナは妊娠してると、新聞が報道する。アシュレーは結婚式のことでヒステリーを起こす。ママはアユレーの結婚後、ヨーロッパ旅行に行こうとしているし、ずっと暮らしてきた家を売ろうと考えている。
ショッピングセンターのセール中、バイト中に、お客さんの投げた靴が跳ね返り、へイヴンの額に当たる。その靴を持って、ヘイヴンは客の後を追い、客の顔に靴を投げつける。家に帰ると、ママに店でのことを尋ねられるが、「ほっといて!」と部屋に入ってしまう。パパと会う日だったが、ヘイヴンがクラクションが聞こえても部屋でじっとしていると、、パパはドアをノックしてまで、へイヴンと会おうとはせず、あきらめて帰ってしまう。
昼寝から覚めた後、へイヴンは突然、めざめのような体験をする。そして、アシュレーに、今までなら、素直に話を聞いていたのに、言いたいことを言う。ママは心配して、へイヴンに「なんでも話して」と言うが、へイヴンは家から飛び出してしまう。
そして、サムナーを追って高齢者会館のダンスパーティ会場に入る。サムナーと踊り、楽しそうな老婦人たちの様子を見ていた。、やがて、最後のダンスでサムナーはヘイヴンを誘う。帰るとき、サムナーは何があったのかと、尋ねるが、もうサムナーと話しても、へイヴンの気持ちは和らがなかった。サムナーの車から飛び出し、雨の中を近所の空き地へ向かう途中、。グウェンドリンにぶつかる。ふたりはしばし見詰め合う。そのとき、アシュレーがヘイヴンを呼んだ。車に乗り込むと、サムナーとアシュレーが別れた本当の理由を教えてもらう。
ヘイヴンがしがみついてきたあこがれ、神話のようなものがくずれ、ヘイヴンはひとつ大人になる。そして、翌日、アシュレーの結婚式、ヘイヴンは初めて、結婚式で涙を流す。
感想
まるで映画を見るみたいな気分で読めた。登場人物がそれぞれどの人もわかりやすいキャラクターで、ありありと頭に描くことができた。あまりに典型的すぎるかも、とも思えたが、ストーリーも離婚劇、父の再婚と姉の結婚に振り回される妹の話という、家族の枠だけでなく、友だちの初恋や、グウェンドリンの帰郷、休業などをからませ、幅も奥行きもあり、読み応えがあった。「花嫁のパパ」みたいなどたばたたっちでもあり、ジーンともさせてくれ、いい話だったな・・・と読後感がさわやかだった。
サムナーという人物は特に魅力的で、こういう男の子とどうしてアユレーは別れたのか、最後直前まで不思議だった。
丘の家、夢の家族(Awake and Dreaming) 1996年 カナダ
2000年10月 徳間書店
著者
キット・ピアソン 1947年カナダ生まれ。大学で図書館学、大学院で児童文学を学んだ後、児童図書館員・教師として働きながら、子どもの本を書き始め,高い評価を受ける。現在は創作に専念している。作品に「空がおちてくる」(未訳)「床下の古い時計」(金の星社刊)等。カナダのバンクーバー在住
登場人物
シーオ(シオドラ)・キャフリー  主人公 9歳
メアリー・リー・キャフリー シーオの母親 25歳
シャロン リーの姉
ジョン・カルダー 一男 12歳
アンナ・カルダー 一女 10歳
リズベス・カルダー 二女 7歳
ベン・カルダー 二男 4歳
ダン・カルダー 4人のこどもの父親 ビクトリア大学で文学を教えている
ローラ・カルダー 4人の子どもの母親 イラストレーター
セシリー・ストーン 幽霊 元作家 カルダー家に住んでいた
スカイ シーオの友だち
キャル リーの恋人
あらすじ
シーオは母親と二人暮し。厳しい現実から逃れるため、いつも本の中の世界、空想へと逃げ込んでいる。狭いアパートの部屋、破れた靴、空腹、屈辱的な物乞いを強いられること、等、シーオはそんな生活ではなく、本当の家族のいる家庭を頭に描き暮らしていた。そんなとき、母親のリーはキャルという恋人ができ、リーはキャルと暮らすことに決める。シーオはキャルがシーオを受け入れることができるようになるまで、ビクトリアに住むリーの姉、シャロンのところで暮らすことになる。シーオは嫌がるが、リーは有無を言わさず、シーオを連れて行く。
シャロンのところへ向かうフェリーの中で、シーオは母親とケンカする、それを見ている女の人がいた。そして、シーオがもう口を利かなくなり、本に目を落としていると、リーはたばこを吸いに、船室を出て行く。その直後、シーオがいつも思い描いていたような、理想的な4人きょうだいが席の通路をやってくる。シーオは勇気を振り絞り、きょうだいの一人、アンナの方に近づくと、アンナの方から声をかけてきた。そして4人とシーオは知り合いになり、仲良く遊ぶ。4人の感じのいい両親にも紹介される。だが、デッキで遊び、新月に願いをかけようとしていたところへ、リーが怒った顔をして近づいてくる。シーオは新月に「お願い、いますぐ、この家族のひとりにして!」と願いをかけ、気を失う。
シーオが目を覚ましたのは、全く知らない家、楽しげに散らかった子ども部屋だった。シーオの願いはかない、シーオは4人きょうだいの家族、カルダー家の一員になっていた。
家族全員が仲良く、だれもいらだったり、おこったりもしない、理想的な家族。そして、みんながシーオをいつも気遣ってくれる。シーオは新しい家族の一員として、新しい洋服を買ってもらったり、おこづかいをもらい、カルダー家の父、母を「ママ」「パパ」と呼ぶ。学校も通うことになるが、それまでみたいに、学校は恐ろしい場所ではなく、カルダー家の人みたいに、だれもが、いい人のようだった。アンナがきまりを破って、自転車をなくしたときでさえも、ダンもローラも決してアンナをぶったりせず、シーオが「おこられる」と思うことは何もなかった。でも、シーオはやがてまるで幽霊みたいに、みんなに見えないかのような存在になっていく。そして、気が付くと、シーオはフェリーの座席にいた。
母親とのけんかを見ていた女の人もまだそこにいた。
すべて、現実ではなかった、願いがかなったわけではなかった。それでもそれまでのことが、あまりにも現実感があって、シーオには、ただ夢をみていただけとは思えなかった。
シャロンのところにつくと、リーは翌朝、さっさとキャルのところへ行ってしまう。シャロンは役所づとめで、きちんとした生活をしており、シーオを一緒にふたりの時間割を作る。そして町を案内してくれると、カルダー家とともに過ごした場所をたくさん見かける。しかし、それは、シーオが小さいときにシャロンやおばあちゃんと一緒に暮らしていたときの記憶かもしれない。カルダー家の前にあった墓地もあるが、そこも連れて行ってもらったことがあるとシャロンに言われる。
シーオはまるで操り人形になってみたいに生活する。もう、本を読もうとも思わなかった。離婚したての母親とくらしているスカイという女の子と友だちにはなったが、とくに自分から親しくしようともしない。
シーオの時間はきちんと管理されていて、一人になれるときはなかった。でも、シーオはほんとにカルダー家があるのかないのか、自分の目で確かめたくて、スカイに協力してもらって、自分でカルダー家のあった場所に行ってみる。確かにカルダー家はあった、そして、カルダー家のみんなもいたが、シーオのことは誰も知らなかった。シーオはカルダー家の玄関先で倒れてしまう。シーオはカルダー家の人たちに介抱される。そして、みんなに会うが、カルダー家の人たちはシーオが家族の一員だった時のように理想的な家族ではなかったことがわかる。ダンもロ−ラもいらいらして子どもどなったり、嫌味を言うし、子どもたちもケンカしたり、ふくれたりしていた。
それでも、アンナや、ローラはシーオを気遣い、シーオをシャロンの家まで送ってくれ、アンナは電話をかけてきて、また、遊びにくるように誘う。シーオはあの時と一緒ではないにしても、カルダー家にひかれて、でかけ、毎週土曜日に遊びに行くようになる。そして、あるときカルダー家に泊まった夜、真夜中に女の人がカルダー家にやってくるのを見かける。しかし、だれも来てはいなかった。ダンの書斎でたまたま落ちていた本を見ると、その著者セシリー・ストーンが、なんと、その女性だった。セシリーはとっくに死んでいた。カルダー家に以前住んでいたらしい。シーオはその本を借りて一気に読んでしまい、図書館で、もう1冊、セシリーの本を借りて読んでしまう。
そして、セシリーがあのフェリーで自分のことを見つめていた女性でもあると思い出し、新月に願いをかけたあとのことと、セシリーが何か関係があるかも、と、確かめるため、また、カルダー家に泊まりにいく。
シーオは幽霊のセシリーと会い、セシリーが書きたかった本、それが、シーオのような女の子が幸せな家族の一員になるストーリーだったということがわかる。シーオは怖いながらも、セシリーに深い親しみを覚える。
やがて、リーがキャルと別れて、突然やってくる。リーはシャロンにシーオをあずけたままにしたいと言う。シャロンはシーオは母親と暮らすべきだと言う。シーオは行き場がなく、カルダー家の向かいの墓地へ、セシリーに会いに行く。
セシリーは「シーオは作家になれるだろう。周りの人を突き放して、物語の登場人物みたいに考える」と言う。そして、自分はもう、旅立つことを告げる。
シーオはりーに「母親なら、きちんと、私が大きくなるまで責任を持って!私はビクトリアにいたい!」ときっぱり言う。リーはシーオにはっきり言われると、意外ともろく、ビクトリアでシャロンの見つけてくれた家に住み,仕事を探すことにする。
シーオは誕生日にカルダー家で、初めて、リーやシャロンを含む大勢の人たちに祝ってもらう。誰と誰が気が合わないか、リーがカルダー家の人からよく思われていないとかが、最初気になったが,だんだん、それは自分のせいじゃないと思えるようになり、そういうことを観察するのが面白くなる。そして、みんなでの誕生パーティを心から楽しむ。
感想
最初、幽霊が出てきて、その少女時代のことを振り返っていたので、そのことと、シーオのことがごっちゃになって、読みづらかった。でも、あと、ずっとシーオばかりが出てきたので、幽霊は一体なんの関係があるんだろうと、不思議だった。シーオがカルダー家の一員になっている間のことはすっごく楽しそうで、幸せそうで、読んでいて愉快だったけど、シーオが母親に町で踊らされ、物乞いをするのには可哀想で、腹立たしくて、しょうがなかった。
この物語を読んでいる最中、性格が悪い、とか無愛想とかって、一体なんだろうと、ふと思った。シーオは自分を守るために、あえて心を開かず、本の世界に閉じこもっていた。誰に対しても無愛想で。仲良くしてくれたり、親切にしてくれる人に、シーオはそれはただ、表面的だけ(仲間に入れてくれたに見えたお金持ちの子がシーオだけは誕生会に呼ばなかった)とそういう親切なんかをシャットアウトしていた。私自身、ひとりぼっちでいる子をほっとけなくて、いつも声をかけていたが、それは、自己満足や、安っぽい正義感にすぎなかったと自覚しているだけに、身につまされる思いで読んだ。
セシリーの言葉「周りの人を突き放して、物語の登場人物みたいに考える」というのは、いいアイディアだと思う。そうしていれば、もっと感情を荒立てることなく、冷静に穏やかに生きていけるだろうと思った。

2001年9月課題「スター☆ガール」ジェリー・スピネリ
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