第19回 
Thank you, M'am
Summary 2003,9,30 


サンキュー、マム
ごえべえ
 

サンキュー・マム
夜の十一時ごろ、ある少年が大柄な女性に走り寄り、彼女の大きなバッグを奪い取ろうとストラップを引っ張った。だけど、彼の思惑ははずれ、少年の体重とバックの重さのバランスで、少年はサイドウォークにひっくり返った。女性は少年のお尻をひと蹴りし、少年をはがいじめにした。そして、そのまま彼女のバッグを少年に拾わせ、逃げたがる少年を羽交い絞めにして少年を家に連れて行った。
「私がこらしめたら、ミセス・ルーエラ・ベーツ・ワシントン・ジョーンズの名前を忘れられなくなるよ」
少年は逃げたかったが、彼女の家に引きずって行かれた。家のドアは開け放たれたままで、他の居住者の声も聞こえていた。少年はドアを見ていたが、逃げられなかった。
「さあ、顔を洗って」
彼女は少年にシンクで顔を洗うように指示した。
「牢屋へ入れるつもりなのか?」
「その顔ではどこへも連れて行けないよ」
と彼女は言った。
少年が顔を洗うと彼女は夜食の用意をした。
「ブルーのスエードの靴が欲しかったから、金が欲しくて」
「私のバッグを取ろうとしなくても、頼めばよかったんだよ」
「え?」
「私が若い頃にも欲しいものがあったよ。でも、私は人のお金なんか盗もうとしなかったって、言うと思ってるんだろ? そうじゃないよ。あんたにも、神様にも言わないけど、私もいろいろやったのさ」
彼女が夜食の用意をしている間、ドアも開いているし、バッグも見える場所にあったが、少年は逃げようともバッグに手を伸ばそうともしなかった。
少年は彼女が彼のことを信じていないとは思えなかった。少年は彼女に信じてもらいたかった。
ライマメとハムを温め、ココアを作り、一緒に食べた。彼女は少年に何も尋ねず、彼女の仕事、ホテルの美容院のことを話した。
食べ終わると彼女は少年に10ドルを渡した。
「悪いことしてスエードの靴を買ったら、足に火がついちゃうよ」
そう言うと、もう休むからと、少年を家から送り出した。
「悪さしちゃいけないよ」
少年は「ありがとう」以上の何かを言いたかったが何も言えず、彼女を振り返った。
彼女はドアを静かに閉めた。


ミセスジョーンズって、独り者なんでしょうね。
若いころにはそれなりにいろんな悪さもして、それで、自分を襲った少年にお金を与えるなんて、かっこいい!

面白い話でしたね。ほんと。

 

ありがとう、奥さん
しおぴー

 彼女は大柄で、その上、これまた大きなショルダーバッグを肩から提げていた。夜11時頃、暗い通りを歩いていると、後ろから少年が駆けてきて、彼女のその大きなバッグを奪おうとした。ところが勢いあまって仰向けに転んでしまい、彼女に捕まってしまった。
 彼女は少年のシャツを掴んだまま、少年に落ちたバッグを拾わせた。そして、「あんたの顔は汚れてるわね。洗ってあげるから来なさい」と、その手を離すことはなかった。少年が放して欲しいと頼んでも、「あんたが勝手に私にぶつかってくるのが悪いんでしょうが。このミセス・ルエラ・ワシントン・ジョーンズのことを忘れられないようにしてあげるわ」と言って、少年を自分の家まで引きずっていった。
 家に着くと、広い家の他の部屋から笑い声や話し声が聞こえる。二人きりになったわけではないのだ。ジョーンズの奥さんは少年が逃げないように見張るでもなく、少年に洗面所で顔を洗ってくるように言い、清潔なタオルを渡した。少年は心配になって、自分を警察に突き出すのかと尋ねた。そんなことしないわよ、とジョーンズの奥さんは答えた。家に帰って食事にしようと思っていたんだから、と。少年が家に誰もいないんだ、と言うと、奥さんは、「じゃあ、一緒に食べましょう。お腹すいてるんでしょ、バッグをとろうとしたくらいなんだから」と言った。少年が青いスエードの靴が欲しかったんだ、と言うと、ジョーンズの奥さんは、「それじゃあ、バッグをとったりしないで、あたしに欲しいって言えばよかったじゃないの」と答えた。少年は顔から水を滴らせたまま、「え?」と奥さんを見つめていた。沈黙が続いた。少年はどうしていいやらわからず、タオルで顔を拭いていた。ドアは開いたままだ。走れば逃げ出せる!
 奥さんは、「あたしも若い頃は、手に入らないとわかっているのに欲しがったものよ。同じようなことしてきてるのよ。みんな似たようなもの。食事の支度をする間、座ってゆっくりしてなさい」と言い、ついたての向こうのガスレンジや冷蔵庫のある方へ行った。奥さんは少年を見張ることもなく、バッグも置きっぱなしだった。少年はよく考えて、奥さんが見ようと思えば見える場所に腰をかけた。もう奥さんに疑われたくはなかった。
 奥さんは食事の支度を済ませ、テーブルに運んだ。奥さんは、食事の間、少年がどこに住んでいるのかとか、家族のことなど、少年がばつの悪い思いをするようなことを一切聞かなかった。奥さんは自分の仕事の話をした。美容師をしていること、いろんなお客のこと。安いケーキを切り分けて、少年にすすめた。
 食事が終わると、奥さんは立ち上がって少年に10ドルを渡し、青いスエードの靴を買うように、そして二度と人のバッグを盗もうとしたりしないようにと言った。
 奥さんは少年を玄関ドアまで送り、「おやすみ。今度から気をつけなさいよ!」と言って、少年が通りへ出て行くのを見送った。
 少年は「ありがとう、奥さん」より他のことを言うことができず、玄関先で振り返って、大柄なジョーンズの奥さんを見上げた。そして、奥さんはドアを閉めた。


なんだか、いいお話ですね。
肝っ玉母さんみたいな人なのかな。
こんな風に人に優しくできるっていうのは、素敵だなぁ。
さっそく、10セント・ケーキです。

「農業を主体とした時代には、母親たちは、粉、砂糖、バター、卵を混ぜて 10セントにも満たない費用でケーキを作りました。」という記述がありました。
安いけれど、手作りで、愛情のこもったケーキなのかもしれませんね

 

shioさんがお休みで二人のサマリーになりました。とってもあったかいお話だったので、二人だけなのが勿体無い!
かっぱらいをしようとした少年を警察につきださず、家に連れて行き、お金を与えるジョーンズさん。
この後、少年はどういう大人になっていくのでしょう。
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