第25回 
I See You Never
Summary 2004,3,31 


あなたに会う。決してない
ごえべえ
ミセス・オブライエンの家の前に二人の警官に挟まれたラミレズがしょんぼり立っていた。 ラミレズはミセス・オブライエンのアパートの良い借主だった。戦争中にメキシコからロサンジェルスにやってきて、飛行機の部品工場に勤め、しっかり稼ぎ、誰にも文句が言えない程度、お酒をたしなんでいた。
ミセス・オブライエンのキッチンではオーブンでパイが焼きあがろうとしていて、いい香りがした。警官もおいしそうな匂いに身を乗り出した。
広くて綺麗なキッチンでは、ミセス・オブライエンの子どもたちが食事をしていた。
ラミレズは不法滞在でメキシコに追い返されることになっていた。
ラミレズはメキシコに帰りたくなかった。ロサンジェルスでの生活を楽しんでいた。何も悪いことはしていなかった。
ラミレズはもう荷造りしていて、ミセス・オブライエンに鍵を手渡した。
「メキシコへ帰るのね」
「メキシコの北にあるラゴスという小さな町です。帰りたくないです」
ラミレズはキッチンの様子を眺め、隣のアパートを長い間見つめていた。
ミセス・オブライエンは旅したことのあるメキシコのカラカラに乾燥したわびしい風景を思い出した。
「とても残念だわ」
「あなたに会う。決してない」ラミレズはそう繰り返した。警官は笑ったが、ラミレズが気づかないので、すぐに笑うのをやめた。ラミレズはミセス・オブライエンの手を握って、礼を言い、警官に連れられて行ってしまった。
ミセス・オブライエンは再び食卓について、一口ステーキを食べたが、ふと手を止めた。
「今、気づいたわ。もう、ラミレズさんに会うことはないのね」


これ、もしかして、ミセス・オブライエンとラミレズはお互いに好意を寄せ合っていたということなんでしょうか?
別離
Megumi

ノックの音でミセス・オブライアンがドアをあけると、ラミルツ氏が警官に伴われてたっていた。ラミルツはオブライアン宅の下宿人で、2年前にメキシコシティからここロサンゼルスにやってきた。オブライアンは厳しいが親切な宿主で、ラミルツのことを働き者で良い下宿人だと思っていた。
彼は不法に長期滞在していたので、国へ帰ることになったという。彼は飛行機工場で働き、週に1度飲みに行く程度のつつましい暮らしをしていたが、欲しい物が手に入るようになると、女性にプレゼントを買ったり、夜な夜な映画館や高級レストランに行くようになったりと、しだいに生活が派手になっていった。しかし、車を買って支払いを滞らせてしまい、ディーラーが怒ってその車を持っていってしまったので、もうこれ以上ロスに滞在できなくなった。
メキシコは暑くて貧しい国である。彼はロスが好きで離れたくないと思っていた。働いてお金持ちになり、生活を楽しんでいた。一体それのどこがいけなかったのか、と彼は思っていた。オブライアンも彼を気の毒に思った。そして、彼にもう二度と会えないのだとわかり悲しんだ。
***********

このストーリーのもっとも言いたかったことってなんでしょうね。お金を持つと人は変わるってこと???

もう会えない
しおぴー

 オブライエン夫人のところにラミレズさんが部屋を借りにやって来たのは二年半前のことだった。ラミレズさんは、戦時中から携わってきた飛行機の部品作りの仕事を戦争後も続け、当初は非常に稼ぎもした。ラミレズさんは、その金をとってあったし、飲んで酔うのは週に一度だけだった。オブライエン夫人は、それくらいは認められると思っていた。
 ラミレズさんは、オブライエン夫人のところへ来て以来、ラジオを買って、毎晩大音量で鳴らした。時計も買った。夜毎静まり返った通りを歩いて窓辺に色とりどりの洋服を見ると、それも買った。宝石を見れば、女友達に買い与えた。一時期は週に五夜も映画を見に出かけたこともあったし、路面電車に乗りに街に出かけもした。大きなレストランに行ってコースディナーを取り、オペラや劇場にも足を運んだ。車を買って代金を支払い忘れていたために、怒ったディーラーがその車を取りに来たこともあった。
 しかし、ラミレズさんは、実は一時ビザしか取得していなかったため、滞在期間を半年過ぎていて、メキシコへ帰らなければならなくなった。オブライエン夫人は、一度メキシコ国境付近の町を訪れたときのことを思い出した。荒涼として人気のないさびしいところだった。
 ラミレズさんはラミレズ夫人の手を取り、メキシコに戻りたくないと訴え、「さようなら、オブライエンさん、もう会うことはありません」と涙を流した。オブライエン夫人は「残念です。あなたはいい借家人でした。何か私にできることがあればよかったのですが」と答えた。ラミレズさんが去った後、子供たちがいる食卓に戻り、冷めてしまったステーキを一切れ口に入れて、ゆっくり噛んだ。と、閉じられたドアを見つめてフォークとナイフを置いた。
 「ママ、どうしたの?」「今気が付いたのよ。もうラミレズさんに会うことはないのね」

******

遅くなりました、3月分です。
私の勝手な想像では、オブライエン夫人は、ラミレズさんをそれほどいい人だと思っていたわけではないんじゃないかなぁと。普通に考えれば、大音量でラジオを鳴らすわ、夜毎遊び呆けるわ、車の代金は支払わないわでは、困った人に借りられちゃった、と思うのではないでしょうか。
子供の反応も冷たかったですしね。ラミレズさんとお別れだというのに、「ごはん、冷めちゃうよ」なんて言いにくるくらいですから。
それにしても、ブラッドベリというと、どうしても『華氏451度』のイメージが強くて、SFばかりかと思っていたら、こういう作品もあったのですね〜。
うーん、おもしろい。

 

レイ・ブラッドベリで検索したら、ファンクラブのサイトがありました。しおぴーさんは「華氏451度」を挙げられていましたが、私は萩尾望都でしか、ブラッドベリは「ウは宇宙船のウ」のイメージです。ってやはり、SFですよね。こういう普通の短編も書いてたの、確かに驚きでした。
しおぴーさんもMegumiさんも夫人はラミレズさんをそう好きでなかったと思われるんですよね。
確かに子どもたちは、そうでもなかったけど、夫人は席についてからも考えてたし、好意的だったように思えたのですが… しかし、この作品のテーマ、わからなかったです。
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