下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん
(自宅読書会2003年6月課題)


嶽本 野ばら 小学館
その他の著者の作品:「ミシン」「エミリー」「カフェー小品集」他

概要

ロリータファッションをこよなく愛し、その背景にあるロココ文化を何よりと思っている女子高生と、暴走族でヤンキーファッションの女子高生の友情物語。

感想

イン・ザ・プール」を読んで以来の大笑いした作品。
出だしは、もったいをつけたような語り口調で、とっつきにくかった。「ございます」というような丁寧語の語りは、奇妙で、なんとなくオカマの人が話しているように思えるし、小説なのか、ノンフィクションなのかも判断しづらかった。
とくに、導入部はロココ文化の説明から始まり、登場人物らしき人の説明さえ中々出てこないので、(でも、そのロココ文化の説明も笑える)一体、この作品は一人語りの登場人物、ほとんどなしのものなのか、と読んでいてジリジリしてきた。

けど、その語り手である竜ヶ崎桃子がなぜ下妻(茨城県 )に移り住んだのかを説明しだすと、一気に面白くなってくる。桃子の父親がいかにダメで馬鹿な親父であるかを、桃子はクールに語る。
また以前住んでいた尼崎のことも小馬鹿にしつつ面白おかしく語る。(けど、それって、ありそぅ!とグフグフ笑いながら読んだ)
桃子が小学生だったときに両親は離婚するのだが、そのときの母への桃子の捨て台詞(桃子は母を恨んでいるわけではないが)が、クール。
そのセリフのままに(はっきりとしたセリフは忘れたが)桃子は人に頼らず(親のすねはかじるが)、たくましく、しぶとく、自分の好きなもの(ロココ文化とロリータファッション)のために 生きていく。
やり方はめちゃくちゃだし、「人は一番大切なものは決して、誰にも貸さないから、借りたお金は返さない」というモットーには恐れ入るが、それなりに、筋が通っている。友達がいないなくても、ロリータファッションがまるで認知されない下妻でも(指をさされながらも)ロリータを貫く彼女の姿勢は小気味よい。

バッタ屋をやっていた父親の在庫である、ベルサーチのバッタものを売りさばく過程で暴走族の白百合イチゴと知り合う。ロリータの桃子にはとんでもないようなファッション、ヤンキーのイチゴ。
でも、イチゴは桃子と話すのがなぜか心地よく、バッタ物を買うだけでなく、パチンコを一緒にしたり、お茶を飲みに行ったりする。「おれたちって、なんだろうな」というイチゴの質問に桃子は「友達だ」とは決して言わない。
桃子のそういうところもイチゴは気に入っていた。

暴走族でありながら、原チャリ(50cc)の免許しか持っていないイチゴ、刺繍が趣味で、頼まれてイチゴの学ランに何日も寝ないで刺繍をしてやる桃子。
イチゴが仲間からリンチされそうだと桃子が気づいてから後は、爆笑と涙の結末まで、一度も本を置けなかった。真夜中にベッドの上で大笑いしつつ、家族に変な目で見られつつ読みきった。
読後がとっても爽快。

まったくベタベタしたところのない二人の女の子の友情物語、笑いとともに読んでるこちらまで元気が沸いてくる話だった。
けど、どうして、表紙はあんなに地味なのか・・・ヤンキーファッションの女の子とロリータファッションの女の子の写真か絵だったら、インパクトもあるだろうし、内容も見ただけでよくわかるのになぁ・・・
なお、桃子がこよなく愛す 「Baby, The Stars Shine Bright」というブランドは実在していて、HPはコチラ

著者の嶽本野ばらは、京都の人らしい。テレビでも見かけることがあるとか。これからどんな作品を書くのか、楽しみ。

追記:
自分の友情について考えさせられた。友情ってなんだろう。友達だと言える人はそこそこいるが、桃子たちのように、潔い友情関係を自分は持っているのかどうか、自信がないように思えた。
友達、知り合い、親友、人間関係、いつまでたっても答えのでない、こうだとは言い切れないものなのかもしれない。

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