第十三回 
The Cliff
Summary 2003,3,31 



ごえべえ

その崖へ向かう途中、男は咳をしながら、ずっとハンドル片手にタバコを吸い続けていた。
「たばこを吸っちゃいないだろうな」「吸ってないよ」少年は答えた。「体をピュアにしとかなきゃならないんだろ」男は自分はも体をピュアにしておかなければならない必要がないんだと言った。
 急斜面を車は登っていく。「もうそばまで来てるのかな」波の砕ける音を聞いて少年が尋ねると、「我慢がならないんだろ、我慢しなれば、死ぬぞ」と男は忠告した。
 少年はニューヨークメッツの帽子をかぶっている。男は、少年に女がいないかどうかも尋ねた。キスされたことはあると少年は答えた。
「ときどきお前のこと何もかも知ってるような気がするときがあるが、何も知っちゃいないという気もするんだ」と男は話した。「おれは高潔からをふみはずしたことが何度もあった。でも呪文は忘れなかった」と男は言い、何も隠さないほうが身のためだと警告し、ワインをグイっと飲んだ。
 崖に着いて、車から降り、男はロープを取り出した。少年は靴を脱ぎ、裸足で地面に魔法のサークルを描いた。地面には砂もなく、サークルは見えなかった。少年は男が言う通りにし、ロープを持った、そして崖から飛び出した。少年は魔法を感じ、彼は自由自在に空を飛んだ。カリフォルニアの照りつく真昼の海の上を。
 彼は、真夜中に街中のビルとビルの間を飛んで、女の子たちを魅了してみるのもいいなと考えた、そういうやましい考えを男はとうの昔に忘れてしまっているだろうが。

長くなっちゃいました。どこを省けばいいのか・・「Fiath, hope, charity...」のくだりも書いたほうがよかったのかな。メッツの帽子はなんだか、書いておきたかったので入れました。


shio

  その崖へと向かう車の中、老人は片手でハンドルを握り、もう一方の手にはタバコを持っていた。車の中はワインとタバコの臭いでいっぱいだ。老人はしきりに咳込みながらもタバコを吸い続けている。「お前はタバコなんか吸ってないな?」少年が首を振ると、老人は続けた。「これからも吸うなよ。身体をきれいにしとくんだ」自分はしてないくせに、と少年に言われると、俺はもういいんだよ、と言い返す。
 少年はふと、波の砕ける音を聞いたような気がして、「もうそろそろ着く?」とたずねた。「もっと我慢しろ。何度も言っただろ、我慢することを覚えなけりゃ―」「命を落とす、だろ。わかってるって」
 「お前、彼女はいるのか?」「僕、まだ15歳だよ。キスくらいはしたことあるけどさ」「隠しごとはするなよ。隠しごとがあると、この魔法はうまくいかないんだ。大事なのは、信仰、希望、愛、そして呪文だ。俺は何度も高潔の道を踏み外したが、呪文だけは忘れたことはない」
 崖に着くと、老人は空き地に車を止めた。ワインボトルを取り出してぐいっと飲むと、車から取り出したロープを少年に持たせる。少年は裸足にジーンズ、メッツの帽子という姿だ。二人は崖の先端へと進み出た。少年は老人に言われた通り、足で地面に見えない円を描いた。
 「心は澄んでいるか?」「うん」
 「こわくないか?」「全然」
 「準備はいいか?じゃあ、飛べ!」
 少年は地面を蹴った。身体が魔法で宙に浮いているのを感じる。ロープも必要なかった。思うままに宙を舞い、嬉しさに歓声をあげながらも、少年は思っていた。これは僕らのやり方じゃないな、晴れた真昼間に飛ぶなんて若者らしくないさ。僕なら夜の街の上を、ビルの群れをかすめながら飛ぶんだ。女の子達がため息をついて窓の外を眺めているような真夜中の空を。
 少年は、はるか下にいる老人に笑いかけた。老人は、そんなよこしまな目的などとうに忘れ去ったように、ただ手を振っていた。


初めて締め切りに間に合いました (^^)
何だか不思議なお話ですね。
私もどこを省けばいいのか、結構悩みました。大事なとこを落としてるかも。
最後の部分、訳しにくいな、と思ってたんですが、ごえべえさんのサマリを見てなるほど!と思いました。人の訳やサマリを見るのって、ほんとに勉強になりますね


しおぴー

崖へ向かう一台の車。車内はワインと煙草の匂いに満ち、老人が咳込みながら運転している。同乗する少年が老人からいつもの話を聞かされている。少年は大リーグのメッツの帽子を被っている。煙草など吸うもんじゃない、体は「純粋」に保たなけりゃ、と老人は言う。少年が「自分は純粋にしていないじゃないか」と言うと、老人は「今純粋なんだから、純粋にしておく必要なんかないんだ」と言う。少年が「まだ着かないの?」と尋ねれば、老人は「辛抱が足りんな」と言う。老人は、自分の言いつけを守れないようでは「死んじまうぞ」、といつも言うのだ。
 車が崖に到着する。信念、希望、慈愛、愛情、魔法の呪文。これを信じられないようでは、岩に頭をぶつけて粉々になってしまう。そう老人は言う。大丈夫、信じてるさ、と少年はやや強がった風に言う。
 二人は車を降りる。老人は車からロープを取り出し、少年がそんなものいらないと言っても、自分のやり方でやると言う。少年はジーンズと帽子以外を脱ぐよう言われ、そしてとうとう魔法を伝授される。足で地面に円を描き、水平線を見つめ、老人に言われたとおりの呪文を唱える。老人は念のためにロープの端をつかませる。心は澄み切っているか、恐怖はないかと尋ねる。少年は大丈夫だと短く答える。老人は叫ぶ。「飛べ!」
 少年は飛んだ。空へ向かい高く、海へと低く、そしてまた急上昇。自由自在に空中を泳ぐ。老人は歓喜の声を上げる。海よ、大地よ、これがそのやり方なんだ。老人は笑い出した。咳もすっかりおさまっている。空よ! 老人は言う。
 少年は老人が呪文を伝授してくれたことに感謝している。しかし、海、空、崖、甘いワインの香り…これは老人のやり方だ。少年は、深夜、都会の街の中を低く弧を描いて飛びたいと思った。女たちが服を脱ぎ、淀んだ夜の空気に向かって部屋の窓から吐息をつく深夜に飛びたい、少年はそんなことを考えた。そして、飛ぶことで得られる妄想などすっかり遠い昔に忘れてしまい、今は少年に手を振る老人に向かって、少年はにやりと笑いかけるのだった。


次の世代に自分の持つ技術を伝える…って、こんな感じなのかしらん。 こんな感想って、もしかして、この短編の趣旨からずれているのかなぁ。ちょっと自信がないです。 

前回で勉強会も一年たちました。今月はしおぴーさんもshioさんも、素早く、サマリーを出してくださって、感謝しています。
そして、お二人のサマリーと自分のを比較して、読むときのイメージの広がりの拙さが情けなかったです。お二人とも情景をしっかり、描写されていて、感心しました。
さて、カモメの飛び交う海を見下ろす崖から、魔法で飛ぶ少年。そして、その呪文を教える年老いた男。
酒びたりでタバコを吸い続ける男と、飛ぶことにウズウズしているまだ純粋な少年、二人の対照的な描写が印象的でした。そして、この、呪文で飛ぶということは、何の象徴なのかなと考えました。
よくわかりませんが、汚れを知らない心と体で自由自在に飛ぶことは、自分の夢や青春、美しさを謳歌し、世の中に穢れない愛をそそぐことなのかも・・・
ちょっと大げさすぎかな。

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