藤堂 志津子

夫の彼女 
夫の彼女(幻冬舎)(2000/6)
夫の彼女(幻冬舎文庫) (2003/8)

概要<
「独身に戻りたい」と結婚5年にして唐突に言い出す夫、典比呂。涼紀はそれを動揺せずに鷹揚に受け取るが…

感想

友人がブログで、朝、少し読もうと、座ったら、面白くて、読み終わるまで立ち上がれなかったと書いていたので、どんなに面白いのかと、すぐに図書館で予約した。
私は1日で読みきったわけではないが、止まらないほど面白かった。(3日で読了)
まず、タイトルで夫の彼女の話なんだと思い込まされ、それを面白いように裏切られるのが心地よかった。
主人公の涼紀(すずき)は容姿にはめぐまれてはいないものの、人間的にとても魅力的。そして、涼紀が勤め先で知り合う春田ヒトミというきっぷのいい、男っぽい女性がまたユニークな人物で、慎重な涼紀をリードしていく様が面白い。
結婚しても、子どももいなくて、夫に対して恋愛感情を持ち続け、悔しいけど、腹がたつけど、愛してるという涼紀の気持ちが伝わってくる。
夫がいかにもモテそうな、そつのない魅力的な男というも、すごくよくわかり、涼紀にとって、交換不可能な男性であることもうなずける。
別居する際に、プレゼントとして買った、高価な椅子を夫に買い取ってくれと言う涼紀。そういうところがとてもリアル。ペラペラした恋愛小説ではなく、しかも、ドロドロもしてないのが、すごい。
これまで藤堂志津子の作品を一度も読んだことがなく、てっきり、大人っぽい、文学的でとっつきにくい小説なんだろうと思い込んでいたが、まったく違っていた。変に文学調に格調高く、なんてこともなく、それでいて、豊かな表現力と描写力と人間観察力が優れた、読みやすい小説だった。
私は林真理子の作品がキライだが、それは、彼女の描き方はどうも、登場人物を突き放し、馬鹿にしつつ書いているように思えるからかもしれない。でも、藤堂志津子はどの登場人物へもやさしい眼差しを向けているように感じられる。作品全体にどんな人であっても、その人をそのまま受け入れてくれるような、キャパの大きさが感じられた。
藤堂志津子の作品を全て読みたい! と思わされた作品だった。

グロリアの感想/

昔の恋人 文庫
昔の恋人(集英社)(1999/12)
概要
感想
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