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ことばの力で人生と未来を拓く
活字文化推進機構・京都新聞主催
2010年6月12日(土)立命館朱雀ホール

参加のきっかけ

 読書会「話のつづら」のメンバーが京都新聞に、このイベントのお知らせが出ていたとメールをくれた。
今年は、「国民読書年」だそうだ。読書についていろいろ想いのある私だけれど、今年がそういう年と決められていたとは知らなかった。
開催地が立命館朱雀ということで、今年、立命館に入学した息子のいるわたしにとって親しみを勝手に抱いてしまう場所。そして、二条の映画館のすぐそばであり、きれいな煉瓦造りの建物は、いつも外から見るだけだったので、中に入ってみる機会を逃してたくなかった。
講演予定の村山由佳さんの作品は読んだことはないものの、読んでみたいとは、以前から思っていた。
講演に出席する前に、いくつか彼女の作品を読んでおこうと、さっそくデビュー作の「天使の卵」を購入した。
「天使の卵」は浪人生と27歳の精神科医の恋愛小説で、47歳の私には子どものような二人の恋物語ではあったが、ストーリーとみずみずしい言葉に感情移入して夢中で読み終えてしまった。
まだ講演まで時間があったので、直木賞受賞作だという「星々の舟」をさらに買って読み出した。
講演の日までには読み終えることができなかったが、村山由佳氏の作品に触れ、講演への期待は大きくふくらんでいった。

立命館朱雀キャンパス

 初めて足を踏み入れた立命館朱雀キャンパス。
 7階は学生でなくても利用できるレストランになっている。大学院スペースには入ることが出来ず、一階をくるりと見て回っただけ。イベントの開催されるホールは5階。思ったより広かった。定員が500名。1時半から始まるというのに、一緒に行った読書会の友人と待ち合わせたのは、1時15分。もう満席状態で後ろの方に座らなきゃいけないかと思っていたが、前から3番目の席が並んで空いていた♪
 ゆったりとした座席で、肘宛てのところには、テーブルが折り畳まれていた。講演のメモを取っていたけれど、メモを取るのをやめてからテーブルがあることに気づいたのは、間抜けだった。

村山由佳氏講演「私が作家になった理由」

 著作に写真が載っていたし、イベントの始まる前にもらったチラシにも彼女の写真があったから、どんな風貌なのかは、知っていた。ふんわりした雰囲気の素敵な女性。1時間に及ぶ講演。かなり長い。話し続けるのは大変だろうなと思っていた。
 話し始められて、アナウンサーのように、はっきりとした口調、それなのに、柔らかい語り口。内容は一般的なことではないし、彼女自身の体験を交えたものだというのに、その口調が激することもなく、終始、おだやかでにこやか。
 ベタベタした感じもなく、さらりとしているのに、心に響く。語る言葉、ひとつひとつをよく吟味し、選び抜いているのだろう。
 私は、話し始めるとつい激してしまい、大きな声になったり早口になったりしてしまう。そして、話と話の継ぎ目に「なんと言えばいいのか」などと、余計な言葉をはさんでしまう。彼女は、そういうことはなく、焦点をぶらさず、これから話すことを提示してから、説明に入る。それが、とてもわかりやすかった。
 行動力も、実行力も、情熱もどれも熱いものを持っている方だというのに、語り口はゆるやかでまろやか。
 押しまくるとかガンガンしゃべるなんてものとはほど遠い。それなのに、彼女の激しさや言葉や書く物に対する強く深い想いが、人一番強いことが胸にズシンときた。
 最近、一番、刺激的な仕事は、ヌードを撮影したこと、と語られた。自分のヌードではなく、モデルのヌードを撮影したと。小説家であっても、テレビの旅番組や、化粧品のコラムや、小説以外の仕事も多いこと。25歳で結婚し、14年間、田舎暮らしをしていたこと。離婚の経緯。離婚後の作品は「どうせ脱ぐなら銀座の大通りの真ん中で脱いでやろう」というコンセプトで書いたこと。言葉の不完全さ。
 どの話題も、ひと言も聞き逃したくないと思うくらいだった。できれば、録音しておきたかった。内容もであるが、語り方がとても心地よかった。
 帰宅してから、離婚後の作品「ダブルファンタジー」(柴田錬三郎賞・中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞のトリプル受賞作)を図書館で検索してみたら、なんと、80人以上の予約! すぐに購入した。
 こういう機会がなければ、気にはなっていても、中々、読まなかったかもしれない彼女の作品。読んでみて、それから話を聞けて、また読めて、幸運だった。イベントに誘ってくれた友人、そして主催者に感謝している。

海老瀬はな氏(女優・映画「京都太秦物語」主演)朗読 「きみのためにできること」(村山由佳著)

 音声技師の主人公がそもそも「音声」に興味を持ったきっかけのところと、木を削る音を録音するところの2カ所の朗読だった。
 図書館で幼い子どもたちに読み聞かせをしている私。読んで聞いてもらうのも好きだけれど、読んでもらうのも大好き。
 家では11歳の息子にシェークスピアの「オセロ」「マクベス」なんかを最近、読んでもらった。塾でも、すぐ「音読して」と生徒に頼んでいる。
 さすが女優と言うのだろうか、情感豊かに、みずみずしい若い声での朗読に聴き入った。「きみのために…」の主人公は男性だけれど、彼女の朗読は違和感なく、主人公が素直に気持ちを語っているかのように思えた。
 日頃、気に留めたことのなかった映像の中の音声について興味がわいた。「音」そのものについて、自分がどれほど、無関心でいたかがわかった。
 愛らしく真摯な表情の凛としたものを秘めたような彼女が、どんな演技をするのだろうか。映画で確かめてみたい。

シンポジウム「ことばの力で人生と未来を拓く」
 パネリスト
   薄井道正氏(立命館守山中学校・高等学校国語科教諭、立命館大学非常勤講師)
   北川達夫氏(日本教育大学院大学客員教授)
   渡部隆夫氏(ワタベウェディング株式会社会長)
  コーディネーター
   上田耕滋氏(京都新聞総合研究所主任研究員)
 
 ディスカッションだと思っていたけれど、コーディネーターが質問を投げかけ、それについて、パネリストがそれぞれ答えるという形式だった。
 読書や、「言葉」というものの力について、そして子どもたちへの読書への誘い、会社での取り組みなど、それぞれの立場でのいろんな話をされた。
 薄井氏は学校でおすすめの300冊という小冊子を生徒に配っているが、まるで「読んではいけない300冊」のように、生徒たちはそれを避けているとか。中高生の頃は教師が勧めるような本は、どうも読む気にならないのだろう。読書教育をしている学校は確実に学力が伸びているという結果が出ているそうだ。「本を読め! 勉強をしろ!」と生徒たちに言っていると、「どっちなん?」と聞かれるそうだ。勉強も大切だけれど、読書も大切。
 強制的というのは、言い方は悪いけれど、ある意味、強制的な読書も必要だとも説かれた。彼自身、大学生のとき、アルバイトでもらった1万円を先輩に取り上げられ、先輩が選んだ本を無理矢理買わされたそうだ。「その1万円で、ご飯を食べなきゃいけない!」と訴えると、先輩は「メシなら、オレが食わせてやる。本は自分の金で買わないと身にならない。メシは人の金で食っても身になるけど」と言われたそうだ。そして、ちゃんと読んでいるか、口頭試問され、合格しないと、ご飯を食べさせてもらえなかったとか。だから、自分が読みたいでなく、人が選んだ本を読むことになり、またそれが面白くなり、世界が広がったとも話されていた。
 本を読むきっかけや、本との出会いは、人の人生も左右するものではないだろうかと、私は考えることがある。
 読書の楽しみを知らない人は、別の物から本と同じ触発や感動や、世界の広がり、知識の吸収、想像力の遊びなどができるのだろうか? 
 同じ本を読んだ人と感動を共有するということや、本から数珠繋ぎでいろんなジャンルの本、そして趣味への広がり、人との繋がりもできてくる。そんな風に思うのは私だけじゃないだろう。
 北川氏は現在、大学で教壇に立たれているが、元外務官僚で、フィンランドやエストニアで勤務されていた。
 「言葉でダメなときは、人間は力に訴えるんですね。でも、力でダメだったとき、また言葉に戻るんです」と話されていた。オバマ大統領が受賞した前の年にノーベル平和賞を受賞したのは、言葉で紛争を解決したフィンランド人(マルッティ・アハティサーリ元フィンランド大統領。コソヴォ独立に貢献)だと紹介されていた。 言葉だけで紛争を解決できるのなら、戦争なんてなくなる。けれど、それが、何か(例えば強力な兵器や、強大国)の後ろ盾あっての言葉としたら、言葉そのものの力はどうだろう。大人は子どもに「暴力はいけない」と教えるているが、攻撃されたら反撃するのを由とする国、大人が大方だろう。
 言葉で戦争を回避してなんとか戦死者のない解決ができたら。
 ワタベの会長は、ハワイや中国での社員教育のことを話された。中国人には論語を読む学習会を開いて、「親を大切に。きょうだい仲良く」などを呼びかけたと。中国では離職率が高いが、論語学習の成果か、ワタベからの離職はほとんどないそうだ。


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