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百田 尚樹
永遠の0(ゼロ)

永遠の0 (講談社文庫)

特攻で亡くなった祖父。
姉に頼まれて渋々、祖父の戦友にインタビューを始めた健太郎。
祖父、宮部久蔵の人物像が徐々に明らかになり…

読書会の課題になったので、話題作でもあり以前から気になっていた本を、読む機会が来た! と喜んでいた。話題作やベストセラーというのは、読んでみたいけれど、図書館では予約が集中しているので、中々借りにくい。延ばし延ばしにしているうちに年月が経ち、読むきっかけを失うことが多い。
「永遠の0」は出版されたのが、2006年なのだから、6年も経っているのだから、よもや図書館で予約多数ということもなかろうと安心していた。
ところが、2013年1月の課題となっているから、11月の下旬になって、図書館で予約しようとすると、予約が文庫で120以上、ハードカバーで80ほど。
これは、1月に間に合う筈がない。
誤算だった。
岡田准一主演で映画化が決まったから人気が再燃しているのかもしれない。
調べてみると「永遠の0」は13作目のミリオンセラー文庫(12作目は有川浩の「阪急電車」)だそうだ。
とにかく、文庫を手に入れた。
課題に選んだ読書会「話のつづら」のメンバーからは、本について何も聞いていなかった。
まったく何の予備知識もなく読み始めた。
読み始めてようやく、「永遠の0」の「0」が零戦のことだとわかった。
Amazonのブックレビューには、迫力のある空戦シーンのことが、戦闘機のパイロットが書いたことのリライトにすぎないと書かれていたらしい。
そうかもしれない。
そうかもしれないけれど、何も知らなかった私にとっては驚きの連続だったし、桜花の訓練シーンなどは、登場人物の体験が生々しく現実感を持って読めた。
そもそも戦闘機とはどういう役割をするものかすら、私は知らなかった。
第二次世界大戦、いや、戦争そのものについて、何も知識がなかったのが思い知らされた。
本書では、ただの説明文ではなく、物語として、各々の登場人物の体験として生き生きと伝わってきた。
文庫の解説は亡き児玉清だった。
彼は「清々しい感動で魂を浄化してくれる稀有な作家との出逢いに天を仰いで感謝の気持ちを表した」と絶賛していた。
また、「なにやらハンマーで一撃を喰らったような衝撃とともに、人間として究極とも思える尊厳と愛を貫いた男の生き様に深々と頭を垂れ、心の中を吹き抜けた清々しい一陣の風とともにうるわしい人間の存在に思いっきり心を洗われた」とも。
まさしく、特攻で亡くなった宮部久蔵は、信じられないほどに素晴らしい人物だった。
以前「泥流地帯」の拓一に感じたのと同じような、(拓一には恋するような気持ちだった)尊敬してやまない、このように真っ直ぐに生きられたら! と思える男性だった。
健太郎が初めて戦友会から紹介されて会いに行った祖父の戦時を知る男は、
「宮部は卑怯者だった」
と繰り返し罵った。
このときは、そんな卑怯な男の物語をこれから読むのか? と作中の健太郎同様、少々重い気分になった。
それが、一人一人戦友を訪ね歩いて行くうちに祖父、宮部久蔵の類まれな素晴らしい人物像が浮かび上がってくる。
読み進めば進むほどに、もっともっと宮部久蔵のことが知りたくなる。
戦闘機を操るのが神技のようなだけでなく、人間的にも「宮部さんのためなら死ねる。死にたい」と思うような人物。
また、囲碁もプロ並みの腕前であることが出てくる。中学生のころ、囲碁を少々かじった私は、(全然強くないけれど)将棋と囲碁の違い、そして戦争の戦略と囲碁・将棋についての見方など面白かった。
しかし、この小説はただ人物が突出しているだけではない。
戦争があらゆる視線から描かれていた。
いや、私は戦争に関して無知だから読む人が読むと、「偏っている」ととるかもしれないし、まだまだ知識が浅いと思うのかもしれない。
けれど、戦争の理不尽さやアメリカの兵隊の待遇と日本兵の待遇の違い、そして、死んだアメリカ兵にも家族がいる(当たり前のことだが)こと、そういう人と人が殺しあっていることの哀しさ、また、戦後に日米の航空兵が交流している様など、お涙頂戴などではなく、爽やかと言えるような筆致で、にいろいろな角度から戦中、戦後の様を描いている。
本を置いて、数時間後に読み始めても、すぐに物語に没頭してしまい、何度も繰り返し嗚咽をもらした。
読み終わるのが勿体ない話だった。
百田尚樹はこれがデビュー作だそうだが、これからまたどんな作品を描くのか、注目していきたい。
そして、巻末に記された参考文献も読んでみたい。

かっこよすぎる男、宮部久蔵。

足元にもおよばないけれど、私も勇気を持って、まっすぐに生きたい。

百田尚樹氏は本書が出た後に、元戦闘機に搭乗していた方たちと会ったらしい。百田氏はおしかりを受けるかもしれないと思っていたらしいが、「書いてくれてありがとう!」と手を握られたとあった。
(2013年1月2日読了)

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