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自宅読書会2月課題 | |
デミアン -エミール・シンクレールの青春の物語- | |
ヘルマン・ヘッセ 高橋 健二 訳 新潮文庫 |
ヘルマン・ヘッセ 1877年から1962年8月11日(なんと、私が生まれて、1週間後に亡くなっている!) ドイツの抒情詩人・小説家。南独カルプの牧師の家庭に生まれ、神学校に進むが、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走、職を転々とした後、書店員となり、1904年の「郷愁」の成功で作家生活に入る。両対戦時には、非戦論者として苦境に立って、自ら描いた絵を売って生活を立てる。スイス国籍を得、在住。人間の精神の幸福を問う作品を著し続けた。39歳でうつ病になり、ユングの弟子であるラングに60回以上も精神分析を受けた。ラングの紹介でユングに会い、その数日後に夢にデミアンという人物を見て、「デミアン」を書く。デミアンはエミール・シンクレールという名で出版された1919年の作品である。1946年ノーベル文学賞受賞。 |
概要 | |
「私は、自分の中からひとりででてこようとしたところのものを生きてみようと欲したにすぎない。なぜそれがそんなに困難だったのか」 という序文から始まる。エミール・シンクレールがふたつの世界、一方は居心地がよくて、正しく、美しい守られた世界と、闇の世界とも呼べる、決してほめられることもない、秘密や恐怖など「悪」として象徴されるような世界との狭間で、デミアンとの出会いを通じて、その両方の世界を受け入れていく様を描いたもの |
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登場人物 | |
エミール・シンクレール 主人公 裕福な家庭の子供で、模範生。しかし、悪い恐ろしい世界への強いあこがれを持っている フランツ・クローマー エミールより3歳くらい年上、仕立て屋の息子。エミ−ルを脅して、金を要求する マックス・デミアン エミールと同じラテン語学校の裕福な寡婦の息子。エミールよりかなり年上。クロールからエミールを救ってくれる ベアトリーチェ 教会でオルガン奏者。牧師の息子。エミールが高等中学の生徒のときに出会う。「鳥は卵の中から抜け出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという」というデミアンからのメッセージのアプラスサスについて教えてくれる。 エヴァ夫人 デミアンの母親。成人してからエミールが出会う。秘密めいたグループのリーダー。 |
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感想 | |
自分の悪いところを疎んじていませんか? どうして私は欲張りなんだろう、どうして口では立派なことを言っていても、実際には実行することができないんだろう、いけないと言われることなのに、やりたくなるのはどうしてだろう、などなど、誰しも、自分の中に闇の部分を持っているもの。カトリックの僧が一生懸命禁欲的に生きようとしても、エロティックな夢を見てしまい、懺悔するなんて話も聞いたことがあります。 完璧に善だけの存在の人間って、果たして面白みのある人間でしょうか? 少し悪を含んだ人物、毒のある人物のほうが面白く、一緒にいて楽しいのではないでしょうか? 私もただ、「よい人」になりたい、と願っていました。でも、完璧なよい人になどなれはしないし、そんなのは、自分の汚い、醜い、いやらしい部分を覆い隠しているに過ぎないと思うようになりました。 かと言って、本能の趣くままに生きればいいというわけでもない。それは、自分の超自我(スーパーエゴ)がほとんど万人に共通のような普遍的な善悪を判断してくれるので、それに沿っていけばいいんだ、と思うようになりました。 Upset して、感情が爆発してしまうときもありますが、そんな感情が持続することは、まずありえないし、感情が鎮まったときに、自分の心の奥に耳を傾け、それから先の行動に反映させればいい、そんな風に、自己非難にはそれほど陥らないようになりました。そうしたことは、「デミアン」から学んだことではありませんが、「デミアン」を読み、その思いを一層、強く持ちました。 人は、悪と善、両方の面を持ってこそ,人なんだ、と「デミアン」の主人公エミールはデミアンに導かれ、自分の様々な感情や野心、性衝動を肯定していきます。 私は、これは、人に対してもあてはまることだと思います。人は全て短所を持っているし、(よく恋の相手や、人を尊敬するときなんて、理想化して完璧な素晴らしい人と思ってしまいますが)その短所も愛すべきその人の一部だと思えば、その相手の存在自体を愛せるようになるんじゃないか、そうしたら、もっと、人間関係や家族関係、夫婦関係がスムーズにいくのではないでしょうか。 私は信仰は全くないのですが(デミアンでもキリスト教からは離れていきます)、信仰なしにでも、人は自分を愛し、他人、世界を愛し、その愛をよりどころに生きていけるものだと思います。 「デミアン」はヘッセが苦しんだ中から書かれたものです。ヘッセほどの大きな苦しみ、それをきちんと言語化するような能力は私にはありませんが、「デミアン」を読み、自分の中にある考えが言語化でき、そして、肯定でき、共感と感動を得ました。 これから、ヘッセがうつ病から立ち直った後に書かれた「シッタルータ」を読みたいと思っています |